ご挨拶

院長 篠原 信雄
釧路労災病院病院長の篠原信雄と申します。病院長として、一言ご挨拶させていただきます。
私は、1984年北海道大学医学部を卒業後、北海道大学泌尿器科教室に入局いたしました。苫小牧市立病院、市立稚内病院において泌尿器科医として地域医療の経験を積んだのちに、1年間米国ミシガン大学医学部泌尿器科に留学しました。平成4年に北海道大学医学部附属病院泌尿器科助手となり講師、助教授、准教授として勤務し、泌尿器がん全般の診断・治療の発展に全力でとりくんでまいりました。また、北海道大学病院の手術支援ロボット(ダビンチ)の導入・実践に取り組みました。2014年10月に北海道大学大学院医学研究院腎泌尿器外科学教室の教授に任じられ、約10年間にわたり同教室を運営してまいりました。
2024年3月に北海道大学を退職し、4月から本院病院長として勤務しております。本院は独立行政法人労働者健康安全機構が設置する全国32労災病院の一つとして、勤労者医療と地域医療の両軸を担っております。2025年現在、一般急性期病床300床、地域包括ケア病棟50床、緩和ケア病棟33床、HCU 8床、合計391床の構成となっています。内科(消化器内科・腫瘍内科・血液内科)、神経内科、循環器内科、外科(消化器外科・乳腺外科)、整形外科、脳神経外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、麻酔科による総合的な診療に加えて、婦人科・眼科・形成外科の外来診療を提供しております。各科の医師派遣については北海道大学ならびに旭川医科大学の厚いご支援をいただいております。しかし、昨今の地方における医師不足は深刻で、「医師の働き方改革」もあり、解決すべき問題が山積しております。さらに看護師、薬剤師など医療従事者も十分でなく、当院のみならず地域を挙げて、その育成、獲得が求められています。
当院は、地域がん診療連携拠点病院であり、高度かつ専門的ながん医療の提供に加え、がん医療に従事する医師などへの研修、がん患者さんやご家族への相談支援、地域の医療機関への情報提供と連携によるがん医療の均てん化に努力しております。その象徴として、令和5年4月に釧路・根室地域で初めての緩和ケア病棟「れぽふる」を完成させました。強力な消化器内視鏡センターと外科および化学療法センターが有機的に機能して北海道東部地域におけるがんセンターとしての役割を果たし、治療と就労の両立支援にも取り組んでおります。また、令和5年秋には手術支援ロボット ダビンチも導入し、最先端の外科手術を実施する体制も整えております。さらに令和6年5月には8床のHCUを開設し、救急やがん治療の高度急性期医療から一般病棟を経て緩和医療、在宅医療へ繋ぐための医療提供が可能となります。
当院は地域支援病院として、当院の登録医を中心にかかりつけ医からのご紹介を積極的に受け入れ、急性期・回復期を通じて切れ目のない医療を提供するとともに、病状が安定した患者さんは逆紹介するよう心がけております。地域の医療従事者の皆様には、当院の施設・設備をご利用いただけるようなシステムを構築し、さらに地域全体の資質向上のための研修会も開催しております。地域連携総合センターを窓口として、他の病院・診療所との連携を強化し、患者さんに対しては初診予約および入退院からその後のフォローアップまでトータルサポート体制を構築しております。さらに、当院はエイズ治療中核拠点病院でもあり、HIV感染症に対する総合的診療が可能な態勢を整備しております。
令和7年(2025年)はいわゆる「医療の2025年問題」がスタートし、日本の医療体制に大きな変革が起こるとされています。実際、2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、医療や介護の需要が増加します。内閣府「令和4年版高齢社会白書」によると、2025年の高齢者人口は、65~74歳の前期高齢者が1,497万人、75歳以上の後期高齢者が2,180万人になるとされています。実に、国民の約3人に1人が65歳以上になると推測されています。そのような高齢者の急激な増加により医療の需要の高まるとされます。釧根地区においても医療にかかわるさまざまな問題が発生することが予想されます。そのような際にも地域のニーズに柔軟に対応しながら診療機能を維持・拡充し、医療体制の変革にも対応し、これからも地域住民の皆様から求められる病院であり続けたいと思っております。職員一丸となり地域医療を担ってまいりますので、よろしくお願い申し上げます。